も低額な報酬を受けつつ最も苦痛の多い労役に服しているのは婦人である。それにかかわらず男子より軽侮せられ従属者を以《もっ》て冷遇されているのは、唯手足のみを器械的に働かして頭脳を働かさないからである。そういう下層の労役に服している婦人は姑《しばら》く措《お》くとするも、明治の教育を受けたという中流婦人の多数がやはり首なし女である。何らの思想をも持たないのである。
身体の装飾、煮物の加減、裁縫手芸、良人《おっと》の選択、これらは山出しの女中もまた思う事であり、また能《よ》くする所である。良人の機嫌を取るという事も、現在の程度では狭斜《きょうしゃ》の女の嬌態《きょうたい》を学ぼうとして及ばざる位のものである。男子が教育ある婦人を目《もく》して心|私《ひそ》かに高等下女の観をなすのは甚しく不当の評価でない。一般男子の思想に比すれば婦人は何事をも考えていない、何らの立派な感想をも持っていないといってよいのである。
近年婦人解放という問題が出ている。しかしそれは婦人自身が言い出したのでなく、物好きな一部の男子側、議論ばかりで実際にその妻女を解放しそうにない男子側から出た問題である。婦人にも
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