婦人と思想
与謝野晶子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)有《も》っていない

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)山形県|酒田《さかた》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#下げて、地より1字あきで]
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 行うということ働くということは器械的である。従属的である。それ自身に価値を有《も》っていない事である。神経の下等中枢で用の足る事である。わたしは人において最も貴いものは想うこと考えることであると信じている。想うことは最も自由であり、また最も楽しい事である。また最も賢《かしこ》く優れた事である。想うという能力に由《よ》って人は理解もし、設計もし、創造もし、批判もし、反省もし、統一もする。想うて行えばこそ初めて行うこと働くことに意義や価値が生ずるのである。人が動物や器械と異る点はこの想うことの能力を有《も》っているからである。また文明人と野蛮人との区別もこの能力の発達不発達に比例すると思う。

 なぜわたしがかような解り切った事を書き出したかというと、日本人にはまだ考えるということが甚《はなはだ》
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