っていたということに今こそ我々は気が附かないでしょうか。
我々は今日まで政治に対して全く冷淡でなかったかも知れません。しかしながら代議政治の意義と必要とに対する我々の理会と同感とが非常に不足していたことは否定することが出来なかろうと思います。もし政治が日本人全体の生活に重要な機関の一つであり、その振張《しんちょう》と弛緩《しかん》とが直ちに国民の一組成分である個人の生活の休戚に影響することであり、代議政治はその個人の休戚を調節するために個人の自由意志から選抜した代表者が政治を運用しかつ監督する政治であり、従って政治の善悪は日本人において一人として直接の責任を回避することの出来ないものであることを皆さんが徹底して知っておられたならば、皆さんはこれまでのように選挙民として投票権を粗末に使用することもなく、代議士として一国の政治を官僚もしくは政党という一部階級の権勢利福の資料に供することもなかったに違いありません。
代議政体の下にあっては、国事は皆さんの家事の一部であり、国政は皆さんの家政の一面であると言われます。そうして選挙民と代議士との関係は植物における葉と花との関係でなくてはなりま
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