伐の口吻《くちぶり》と比べて少しも進歩していないのに驚かれます。殊に寺内氏の演説に対する憲政会の「弁妄書」が寺内氏らにも劣らぬ官僚臭味を暴露しているのは、正直とはいえ、また余りに国民の要求と懸隔しているのを憐れまずにはいられません。「吾人は必ずしも政党員にあらずんば内閣員たるを得ずと主張するものにあらず」といい、「単に衆議院における多数党の代表者を以て内閣を組織せざるべからずと決議したることなく、声明したることなく、主張したることなし」といい、「内閣組織に当りて貴族院の勢力を度外視するを得ず」というような見苦しい弁疏《べんそ》を、平民の真の味方である大政党の言論として憲法発布後三十年の今日に聞くに到っては時代の逆行、民主思想の退歩として呆《あき》れざるを得ません。これもまた国民を愚弄することの甚だしいものであると思います。
私は敢てこの小さな窓から全日本人に問い掛けます。我々は今こそ真実の個人の権利を以て生きようと自覚すべき時機ではありませんか。我々の生存に必要な政治上の権利を官僚と官僚の変形である既成政党との久しく壟断《ろうだん》するのに放任して置いて、それを自由に行使することを怠
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