溢《おういつ》しているだけで、国民の味方としては何らの表示をも認めることが出来ません。政見を欠くことにおいて浅薄であり、国民の意志を眼中に置かないことにおいて専制的であり、政敵を悪罵し狡獪《こうかい》なる御用党を曲庇することにおいて野卑であると思います。それでは秉公持平の正反対に、みずから政争の有力な選手になって反対党の敵意を挑発し、復讐として肉を噬《くら》い髄を啜《すす》るとも飽かないような深怨を結ばせて、ますます陰険、醜陋、残忍を以て終始する政界の私闘を助長する危険があると思います。
また私の厭《いと》わしく思うことは、寺内内閣に反対する党人たちの言論が理性を基礎としないで感情的に傾き、寺内内閣の徒のみが非立憲的であり官僚主義者であるような不公平、不徹底な立論を敢てし、一朝政権を握れば憲政会自身がまた官僚主義者たることにおいて同じ穴の貍《むじな》であることを掩蔽《えんぺい》し、寺内、後藤二氏から受取った悪罵以上の悪罵を以て酬《むく》いながら、国民の前に怖るべき虚偽を述べつつあることです。彼ら党人の論調の粗笨《そほん》乱暴であることは往年の憲政擁護運動時代における慷慨《こうがい》殺
前へ
次へ
全16ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング