。協会の他の婦人たちは知らず、少くも平塚さんは私たちと同じく恋愛結婚の主張者であるのに、恋愛を基礎条件としない現在の結婚の範囲において、この請願を出されているのは意外です。平塚さんが恋愛結婚の主張を決して放棄されていないことは、協会の事業として別に「恋愛及び結婚の正しき思想の宣伝」の計画があるので推定されますが、それならば恋愛結婚と「花柳病男子の結婚制限」の請願とがどうして調和しているかをお尋ねしたいと思います。
 私たちに取っては、恋愛の成立と完成が結婚の基礎であり目的であるのです。結婚が恋愛に先立つことはありません、先ずその結果として来るものだと考えています。しかるにこの請願で見れば、男女相互の間に恋愛の成立することを唯一の重要条件としないで、「先ず相手たる女子に医師の健康診断書を提示し、花柳病患者にあらざる旨を証明すべし」「現在花柳病に罹《かか》れる男子は結婚する事を得ず」という法律が結婚の死命を制しているように見えます。これに対して平塚さんたちは、恋愛の成立を重要条件とするのは既定のことだといわれるかも知れませんが、到底融和しがたい矛盾が其処にあります。もし男女相互の間に恋愛が
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