男、
醜きを耻《は》ぢざる女、
げに君達の名は強者《きやうしや》なり。

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   第一の陣痛
        (雑詩四十一章)

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    第一の陣痛

わたしは今日《けふ》病んでゐる、
生理的に病んでゐる。
わたしは黙つて目を開《あ》いて
産前《さんぜん》の床《とこ》に横になつてゐる。

なぜだらう、わたしは
度度《たびたび》死ぬ目に遭つてゐながら、
痛みと、血と、叫びに慣れて居ながら、
制しきれない不安と恐怖とに慄《ふる》へてゐる。

若いお医者がわたしを慰めて、
生むことの幸福《しあはせ》を述べて下された。
そんな事ならわたしの方が余計に知つてゐる。
それが今なんの役に立たう。

知識も現実で無い、
経験も過去のものである。
みんな黙つて居て下さい、
みんな傍観者の位置を越えずに居て下さい。

わたしは唯《た》だ一人《ひとり》、
天にも地にも唯《た》だ一人《ひとり》、
じつと唇を噛《か》みしめて
わたし自身の不可抗力を待ちませう。

生むことは、現に
わたしの内から爆《は》ぜる
唯《
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