み》打ちぬ。
婦人運動を排する諸声《もろごゑ》の如何《いか》に高ければとて、
女は何時《いつ》までも新しきゲエテ、カント、ニウトンを生み、
人間は永久《とこしへ》うらわかき母の慈愛に育ちゆく。
女、女、日本の女よ、
いざ諸共《もろとも》に自《みづか》らを知らん。


    鬱金香

黄と、紅《べに》と、みどり、
生《なま》な色どり……
※[#「米+參」、第3水準1−89−88]粉細工《しんこざいく》のやうなチユウリツプの花よ、葉よ。
それを活《い》ける白い磁の鉢、
きやしやな女の手、
た、た、た、た、と注《さ》す水のおと。
ああ、なんと生生《いきいき》した昼であろ。
※[#「米+參」、第3水準1−89−88]粉細工《しんこざいく》のやうなチユウリツプの花よ、葉よ。


    文の端に

皐月《さつき》なかばの晴れた日に、
気早《きばや》い蝉《せみ》が一つ啼《な》き、
何《なに》とて啼《な》いたか知らねども、
森の若葉はその日から
火を吐くやうな息をする。

君の心は知らねども……


    教会の窓

崖《がけ》の上なる教会の
古びた壁の脂《やに》の色、
常に静かでよいけれど、

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