り合せたる金蓮花《きんれんくわ》、
麝香《じやかう》なでしこ、鈴蘭《すゞらん》は
そぞろがはしく手を伸べて、
宝玉函《はうぎよくいれ》の蓋《ふた》をあけ、
黄金《きん》の腕環《うでわ》や紫の
斑入《ふいり》の玉《たま》の耳かざり、
真珠の頸環《くびわ》、どの花も
※[#「執/れっか」、106−上−6]《あつ》い吐息を投げながら、
華奢《くわしや》と匂《にほ》ひを競《きそ》ひげに、
まばゆいばかり差出せど
あはれ、其等《それら》の楽欲《げうよく》と、
世の常の美を軽《かろ》く見て、
わが侯爵夫人《マルキイズ》、なにごとを
いと深げにも、静かにも
思ひつづけて微笑《ほゝゑ》むか。
花の秘密は知り難《がた》い、
けれど、百合《ゆり》をば見てゐると、
わたしの心は涯《はて》もなく
拡がつて行《ゆ》く、伸びて行《ゆ》く。
我《わ》れと我身《わがみ》を抱くやうに
世界の人をひしと抱き、
※[#「執/れっか」、106−下−5]《ねつ》と、涙と、まごころの
中に一所《いつしよ》に融《と》け合つて
生きたいやうな、清らかな
愛の心になつて行《ゆ》く。
[#ここで段組終わり]
[#改丁]
[#ページの左
前へ
次へ
全250ページ中84ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング