ねたし、悲し。
初春《はつはる》
ひがむ気短《きみじ》かな鵯鳥《ひよどり》は
木末《こずゑ》の雪を揺りこぼし、
枝から枝へ、甲高《かんだか》に
凍《い》てつく冬の笛を吹く。
それを聞く
わたしの心も裂けるよに。
それでも木蔭《こかげ》の下枝《しづえ》には
あれ、もう、愛らしい鶯《うぐひす》が
雪解《ゆきげ》の水の小《こ》ながれに
軽く反《そり》打つ身を映し、
ちちと啼《な》く、ちちと啼《な》く。
その小啼《ささなき》は低くても、
春ですわね、春ですわね。
仮名文字
わが歌の仮名文字よ、
あはれ、ほつほつ、
止所《とめど》なく乱れ散る涙のしづく。
誰《たれ》かまた手に結び玉《たま》とは愛《め》でん、
みにくくも乱れ散る涙のしづく。
あはれ、この文字、我が夫《せ》な読みそ、
君ぬらさじと堰《せ》きとむる
しがらみの句切《くぎり》の淀《よど》に
青き愁《うれひ》の水渋《みしぶ》いざよふ。
子守
みなしごの十二《じふに》のをとめ、
きのふより我家《わがいへ》に来て、
四《よ》つになる子の守《もり》をしぬ。
筆と紙、子守は持ちて、
筋《すぢ》を引き、環
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