》を殖《ふ》やす外《ほか》に
恋愛を知らない蟷螂《かまきり》。
玉虫
もう、玉虫の一対《つがひ》を
綺麗《きれい》な手箱に飼ふ娘もありません。
青磁色《せいじいろ》の流行が
廃《すた》れたよりも寂《さび》しい事ですね。
今の娘に感激の無いのは、
玉虫に毒があるよりも
いたましい事ですね。
寂寥《せきれう》
漸《やうや》くに我《わ》れ今は寂《さび》し、
独り在るは寂《さび》し、
薔薇《ばら》を嗅《か》げども寂《さび》し、
君と語れども寂《さび》し、
筆|執《と》りて書けども寂《さび》し、
高く歌へば更に寂《さび》し。
小鳥の巣
落葉《おちば》して人目に附《つ》きぬ、
わが庭の高き木末《こずゑ》に
小鳥の巣一つ懸かれり。
飛び去りて鳥の影無し、
小鳥の巣、霜の置くのみ、
小鳥の巣、日の照《てら》すのみ。
末女《すゑむすめ》
我が藤子《ふぢこ》九《ここの》つながら、
小学の級長ながら、
夜更《よふ》けては独り目覚《めざ》めて
寝台《ねだい》より親を呼ぶなり。
「お蒲団《ふとん》がまた落ちました。」
我が藤子《ふぢこ》風引くなかれ。
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