スチユ》 の破獄《らうやぶり》ですわ。
蚊
蚊よ、そなたの前で、
人間の臆病心《おくびやうしん》は
拡大鏡となり、
また拡声器ともなる。
吸血鬼の幻影、
鬼女《きぢよ》の歎声《たんせい》。
蛾
火に来ては死に、
火に来ては死ぬ。
愚鈍《ぐどん》な虫の本能よ。
同じ火刑《くわけい》の試練を
幾万年くり返す積《つも》りか。
蛾《が》と、さうして人間の女。
朝顔
水浅葱《みづあさぎ》の朝顔の花、
それを見る刹那《せつな》に、
美《うつ》くしい地中海が目に見えて、
わたしは平野丸《ひらのまる》に乗つてゐる。
それから、ボチセリイの
派手な※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]イナスの誕生が前に現れる。
蝦蟇《がま》
罷《まか》り出ましたは、夏の夜《よ》の
虫の一座の立《た》て者で御座る。
歌ふことは致しませねど、
態度を御覧下されえ。
人間の学者批評家にも
わたしのやうな諸君がゐらせられる。
蟷螂《かまきり》
男性の専制以上に
残忍を極める女性の専制。
蟷螂《かまきり》の雌《めす》は
その雄《をす》を食べてしまふ。
種《しゆ
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