ここに有るのは一枚も一枚、
十人《じふにん》の人数《にんず》に対して一枚、
結局、どうしたら好《い》いのでせう。
朱
小さな硯《すゞり》で朱《しゆ》を擦《す》る時、
ふと、巴里《パリイ》の霧の中の
珊瑚紅《さんごこう》の日が一点
わたしの書斎の帷《とばり》[#ルビの「とばり」は底本では「とぼり」]に浮《うか》び、
それがまた、梅蘭芳《メイランフワン》の
楊貴妃《やうきひ》の酔《ゑ》つた目附《めつき》に変つて行《ゆ》く。
独語《どくご》
思はぬで無し、
知らぬで無し、
云《い》はぬでも無し、
唯《た》だ其《そ》れの仲間に入《い》らぬのは、
余りに事の手荒《てあら》なれば、
歌ふ心に遠ければ。
※[#「虫+奚」、第3水準1−91−59]※[#「虫+斥」、第3水準1−91−53]《ばつた》
わたしは小さな※[#「虫+奚」、第3水準1−91−59]※[#「虫+斥」、第3水準1−91−53]《ばつた》を
幾つも幾つも抑《おさ》へることが好きですわ。
わたしの手のなかで、
なんと云《い》ふ、いきいきした
この虫達の反抗力でせう。
まるで BASTILLE《バ
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