《なかば》は現実《うつゝ》、なかば夢。
やはらかに降る、花に降る、
わが髪に降る、草に降る、
うす桃色の糸の雨。
×
赤い椿《つばき》の散る軒《のき》に
埃《ほこり》のつもる臼《うす》と杵《きね》、
莚《むしろ》に干すは何《なん》の種。
少し離れて垣《かき》越《こ》しに
帆柱ばかり見える船。
×
三《み》たび曲つて上《のぼ》る路《みち》、
曲り目ごとに木立《こだち》より
青い入江《いりえ》の見える路《みち》、
椿《つばき》に歌ふ山の鳥
花踏みちらす苔《こけ》の路《みち》。
[#ここで段組終わり]
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夢と現実
(雑詩四十章)
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明日
明日《あす》よ、明日《あす》よ、
そなたはわたしの前にあつて
まだ踏まぬ未来の
不可思議の路《みち》である。
どんなに苦しい日にも、わたしは
そなたに憬《こが》れて励《はげ》み、
どんなに楽《たのし》い日にも、わたしは
そなたを望んで踊りあがる。
明日《あす》よ、明日《あす》よ、
死と飢《うゑ》とに追はれて歩くわたしは
たびたびそなた
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