ら》、
今日《けふ》の盛りの紅《あか》い薔薇《ばら》、
今日《けふ》に倦《あ》いたら明日《あす》の薔薇《ばら》、
とがるつぼみの青い薔薇《ばら》、
摘め、摘め、誰《た》れも春の薔薇《ばら》。
×
己《おの》が痛さを知らぬ虫、
折れた脚《あし》をも食《は》むであろ。
人の言葉を持たぬ牛、
云《い》はずに死ぬることであろ。
ああ虫で無し、牛でなし。
×
夢にをりをり蛇を斬《き》る、
蛇に巻かれて我が力
為《し》ようこと無しに蛇を斬《き》る。
それも苦しい夢か知ら、
人が心で人を斬《き》る。
×
身を云《い》ふに過ぐ、外《ほか》を見よ、
黙黙《もくもく》として我等あり、
我が痛さより痛きなり。
他《た》を見るに過ぐ、目を閉ぢよ、
乏しきものは己《おの》れなり。
×
論ずるをんな糸|採《と》らず、
みちびく男たがやさず、
大学を出ていと賢《さか》し、
言葉は多し、手は白し、
之《こ》れを耻《は》ぢずば何《なに》を耻《は》づ。
×
人に哀れを乞《こ》ひて後《のち》、
涙を流す我が命。
うら耻《はづ》かしと知りながら、
すべて貧しい身すぎから。
ああ我《わ》
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