ぬ間《ま》に
石から虹《にじ》が舞ひあがる。
寝てゐた豹《へう》の目が光る。
×
われにつれなき今日《けふ》の時、
花を摘み摘み行《ゆ》き去りぬ。
唯《た》だやさしきは明日《あす》の時、
われに著《き》せんと、光る衣《きぬ》
千《ち》とせをかけて手に編みぬ。
×
がらすを通し雪が積む、
こころの桟《さん》に雪が積む、
透《す》いて見えるは枯れすすき、
うすい紅梅《こうばい》、やぶつばき、
青いかなしい雪が積む。
×
はやりを追へば切りがない、
合言葉をばけいべつせい。
よくも揃《そろ》うた赤インキ、
ろしあまがひの左書《ひだりが》き、
先《ま》づは二三日《にさにち》あたらしい。
×
うぐひす、そなたも雪の中、
うぐひす、そなたも悲しいか。
春の寒さに音《ね》が細る、
こころ余れど身が凍《こほ》る。
うぐひす、そなたも雪の中。
×
あまりに明るい、奥までも
開《あ》けはなちたるがらんだう、
つばめの出入《でいり》によけれども
ないしよに逢《あ》ふになんとせう、
闇夜《やみよ》も風が身に沁《し》まう。
×
摘め、摘め、誰《た》れも春の薔薇《ば
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