子らは寝に来《こ》ず、母の側《そば》。
母はまだまだ云《い》ひたきに、
金《きん》のお日様、唖《おし》の驢馬《ろば》、
おとぎ噺《ばなし》が云《い》ひたきに。
×
ふくろふがなく、宵になく、
山の法師がつれてなく。
わたしは泣かない気でゐれど、
からりと晴れた今朝《けさ》の窓
あまりに青い空に泣く。
×
おち葉した木が空を打ち、
枝も小枝も腕を張る。
ほんにどの木も冬に勝ち、
しかと大地《たいち》に立つてゐる。
女ごころはいぢけがち。
×
玉葱《たまねぎ》の香《か》を嗅《か》がせても
青い蛙《かへる》はむかんかく。
裂けた心を目にしても
廿《にじふ》世紀は横を向く、
太陽までがすまし行《ゆ》く。
×
話は春の雪の沙汰《さた》、
しろい孔雀《くじやく》のそだてかた、
巴里《パリイ》の夢をもたらした
荻野《をぎの》綾子《あやこ》の宵の唄《うた》、
我子《わがこ》がつくる薔薇《ばら》の畑《はた》。
×
誰《た》れも彼方《かなた》へ行《ゆ》きたがる、
明るい道へ目を見張る、
おそらく其処《そこ》に春がある。
なぜか行《ゆ》くほどその道が
今日《けふ》の
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