年久しき願ひなり。みづから興に触れて折折に試みたる拙きものより、次に其一部を抄せんとす。押韻の法は唐以前の古詩、または欧洲の詩を参照し、主として内心の自律的発展に本づきながら、多少の推敲を加へたり。コンソナンツを避けざるは仏蘭西近代の詩に同じ。毎句に同韻を押し、または隔句に同語を繰返して韻に押すは漢土の古詩に例多し。(一九二八年春)
[#ここで字下げ終わり]
×
砂を掘つたら血が噴いて、
入れた泥鰌《どぢやう》が竜《りよう》になる。
ここで暫《しばら》く絶句して、
序文に凝《こ》つて夜《よ》が明けて、
覚めた夢から針が降る。
×
時に先だち歌ふ人、
しひたげられて光る人、
豚に黄金《こがね》をくれる人、
にがい笑《わらひ》を隠す人、
いつも一人《ひとり》で帰る人。
×
赤い桜をそそのかし、
風の癖《くせ》なるしのび足、
ひとりで聞けば恋慕《れんぼ》らし。
雨はもとより春の糸、
窓の柳も春の糸。
×
見る夢ならば大きかれ、
美《うつ》くしけれど遠き夢、
険《けは》しけれども近き夢。
われは前をば選びつれ、
わかき仲間は後《のち》の夢。
×
すべて
前へ
次へ
全250ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング