《がた》し、
我等が歓楽も今は
此《この》花と共に空《むな》しくやなるらん。
許したまへ、
涙を拭《ぬぐ》ふを。
良人《をつと》は云《い》ひぬ、
「わが庭の薔薇《ばら》の下《もと》に
この花の灰を撒《ま》けよ、
日本の土が
是《これ》に由《よ》りて浄《きよ》まるは
印度《いんど》の古き仏の牙《きば》を
教徒の齎《もたら》せるに勝《まさ》らん。」
暑き日の午前
暑し、暑し、
曇りたる日の温気《うんき》は
油《あぶら》障子の中にある如《ごと》し。
狭き書斎に陳《の》べたる
十鉢《とはち》の朝顔の花は
早くも我に先立ちて※[#「執/れっか」、300−下−4]《ねつ》を感じ、
友禅の小切《こぎれ》の
濡《ぬ》れて撓《たわ》める如《ごと》く、
また、書きさして裂きて丸《まろ》めし
或《ある》時の恋の反古《ほご》の如《ごと》く、
はかなく、いたましく、
みすぼらしく打萎《うちしを》れぬ。
暑し、暑し、
机の蔭《かげ》よりは
小《ちひさ》く憎き吸血魔
藪蚊《やぶか》こそ現れて、
膝《ひざ》を、足を、刺し初む。
されど、アウギユストは元気にて
彼方《かなた》の縁に水鉄砲を弄《いぢ》り、
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