健《けん》はすやすやと
枕蚊帳《まくらかや》の中に眠れり。
この隙《すき》に、君よ、
筆を擱《お》きて、
浴びたまはずや、水を。
たた、たたと落つる
水道の水は細けれど、
その水音《みづおと》に、昨日《きのふ》、
ふと我は偲《しの》びき、
サン・クルウの森の噴水。
隠れ蓑
わたしの庭の「かくれみの」
常緑樹《ときはぎ》ながらいたましや、
時も時とて、茱萸《ぐみ》[#ルビの「ぐみ」は底本では「ぐ」]にさへ、
枳殻《からたち》にさへ花の咲く
夏の初めにいたましや、
みどりの枝のそこかしこ、
たまたまひと葉《は》二葉《ふたは》づつ
日毎《ひごと》に目立つ濃い鬱金《うこん》、
若い白髪《しらが》を見るやうに
染めて落ちるがいたましや。
わたしの庭の「かくれみの、」
見れば泣かれる「かくれみの。」
夜の机
西洋|蝋燭《らふそく》の大理石よりも白きを硝子《がらす》の鉢に燃《もや》し、
夜更《よふ》くるまで黒檀《こくたん》の卓に物書けば幸福《しあはせ》多きかな。
あはれこの梔花色《くちなしいろ》の明りこそ
咲く花の如《ごと》き命を包む想像の狭霧《さぎり》なれ。
これを
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