れっか」、297−上−1]《ねつ》と、芳香《はうかう》と、
七色《なないろ》との、
巨大なる罎《ブタイユ》の前に
人を引く。
あはれ、快きは夏なり。
人皆ギリシヤの古《いにしへ》の如《ごと》く
うすき衣《きぬ》[#ルビの「きぬ」は底本では「ぎぬ」]を著《つ》け、
はた生れながらの
裸となりて、
飽くまでも、湯の如《ごと》く、
光明《くわうみやう》歓喜《くわんぎ》の酒を浴ぶ。
あはれ、快きは夏なり。
人皆太陽に酔《ゑ》へる時、
忽《たちま》ち前に裂くるは
夕立のシトロン。
さて夜《よる》となれば、
金属質の涼風《すゞかぜ》と
水晶の月、夢を揺《ゆす》る。
五月の歌
ああ五月《ごぐわつ》、我等の世界は
太陽と、花と、麦の穂と、
瑠璃《るり》の空とをもて飾られ、
空気は酒室《さかむろ》の呼吸《いき》の如《ごと》く甘く、
光は孔雀《くじやく》の羽《はね》の如《ごと》く緑金《りよくこん》なり。
ああ五月《ごぐわつ》、万物は一新す、
竹の子も地を破り、
どくだみの花も蝶《てふ》を呼び、
蜂《はち》も卵を産む。
かかる時に、母の胎を出《い》でて
清く勇ましき初声《うぶごゑ》を揚ぐる
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