》がしつとりと汗ばんで、
光を睨《にら》み返すやうな目附《めつき》をして、
口は歌ふ前のやうにきゆつと緊《しま》り、
肩と胸が張つて、
腰から足の先までは
きやしやな、しかも堅固な植物の幹が歩《あ》るいてゐるやうである。
みんなの神経は苛苛《いらいら》としてゐるけれど、
みんなの意志は悠揚《いうやう》として、
鉄の軸のやうに正しく動いてゐる。
みんながどの刹那《せつな》をも空《むな》しくせずに
ほんとうに生きてる人達だ、ほんとうに動いてゐる人達だ。
あれ、巨象《マンモス》[#ルビの「マンモス」は底本では「モンマス」]のやうな大機関車を先《さ》きにして、
どの汽車よりも大きな地響《ぢひゞき》を立てて、
ウラジホストツクからブリユツセルまでを、
十二日間で突破する、
ノオル・デキスプレスの最大急行列車が入《はひ》つて来た。
怖《おそ》ろしい威厳を持つた機関車は
今、世界の凡《すべ》ての機関車を圧倒するやうにして駐《とま》つた。
ああ、わたしも是《こ》れに乗つて来たんだ、
ああ、またわたしも是《こ》れに乗つて行《ゆ》くんだ。


    和蘭陀の秋

秋の日が――
旅人の身につまされやすい

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