き》づくりの腰掛に。
「この酒鋪《キヤバレエ》の名物は、
四百《しひやく》年へた古家《ふるいへ》の
きたないことと、剽軽《へうきん》[#「剽軽」は底本では「飄軽」
また正直なあの老爺《おやぢ》、
それにお客は漫画家と
若い詩人に限ること。」
こんな話を友はする。
×
濶《ひろ》い股衣《ヅボン》の大股《おほまた》に
老爺《おやぢ》は寄つて、三人《さんにん》の
日本の客の手を取つた。
伸びるがままに乱れたる
髪も頬髭《ほひげ》も灰白《はひじろ》み、
赤い上被《タブリエ》、青い服、
それも汚《よご》れて裂けたまま。
太い目元に皺《しわ》の寄る
屈托《くつたく》のない笑顔して、
盛高《もりだか》の頬《ほ》と鼻先の
林檎色《りんごいろ》した美《うつ》くしさ。
老爺《おやぢ》の手から、前の卓、
わたしの小《ち》さい杯《さかづき》に
注《つ》がれた酒はムウドンの
丘の上から初秋《はつあき》の
セエヌの水を見るやうな
濃い紫を湛《たた》へてる。
×
「聴け、我が子等《こら》」と客達を
叱《しか》るやうなる叫びごゑ。
老爺《おやぢ》はやをら中央《まんなか》の
麦稈《むぎわら》椅子《
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