ませう。」

巴里《パリイ》から来た三人《さんにん》の
胸は俄《には》かにときめいた。
アカシヤの樹《き》のつづく路《みち》。


    飛行機

空をかき裂《さ》く羽《はね》の音……
今日《けふ》も飛行機が漕《こ》いで来る。
巴里《パリイ》の上を一《ひと》すぢに、
モンマルトルへ漕《こ》いで来る。

ちよいと望遠鏡をわたしにも……
一人《ひとり》は女です……笑つてる……
アカシアの枝が邪魔になる……

[#1行アキは底本ではなし]何処《どこ》へ行《ゆ》くのか知らねども、
毎日飛べば大空の
青い眺めも寂《さび》しかろ。

かき消えて行《ゆ》く飛行機の
夏の日中《ひなか》の羽《はね》の音……


    モンマルトルの宿にて

あれ、あれ、通る、飛行機が、
今日《けふ》も巴里《パリイ》をすぢかひに、
風切る音をふるはせて、
身軽なこなし、高高《たかだか》と
羽《はね》をひろげたよい形《かたち》。

オペラ眼鏡《グラス》を目にあてて、
空を踏まへた胆太《きもぶと》の
若い乗手《のりて》を見上ぐれば、
少し捻《ひね》つた機体から
きらと反射の金《きん》が散る。

若い乗手《のりて》のいさま
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