し達の歩みに合せて、
もう海が踊り始めました。
緑玉《エメラルド》の女衣《ロオブ》に
水晶と黄金《きん》の笹縁《さゝべり》……
浮き上がりつつ、沈みつつ、
沈みつつ、浮き上がりつつ……
そして、その拡がつた長い裾《すそ》が
わたし達の素足と縺《もつ》れ合ひ、
そしてまた、ざぶるうん、ざぶるうんと
間《ま》を置いて海の鐃※[#「金+祓のつくり」、第3水準1−93−6]《ねうばち》が鳴らされます。
あら、鷺《さぎ》が皆立つて行《ゆ》きます、
俄《には》かに紅鷺《べにさぎ》のやうに赤く染まつて……
日が昇るのですね、
霧の中から。
フオンテンブロウの森
秋の歌はそよろと響く
白楊《はくやう》と毛欅《ぶな》の森の奥に。
かの歌を聞きつつ、我等は
しづかに語らめ、しづかに。
褪《さ》めたる朱《しゆ》か、
剥《は》がれたる黄金《きん》か、
風無くて木《こ》の葉は散りぬ、
な払ひそ、よしや、衣《きぬ》にとまるとも。
それもまた木《こ》の葉の如《ごと》く、
かろやかに一つ白き蝶《てふ》
舞ひて降《くだ》れば、尖《とが》りたる
赤むらさきの草ぞゆするる。
眠れ、眠れ、疲れたる
春夏
前へ
次へ
全250ページ中194ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング