かに青きを見詰めながら、
静かなり、今朝《けさ》の心。
秋の心
歌はんとして躊躇《ためら》へり、
かかる事、昨日《きのふ》無かりき。
善《よ》し悪《あ》しを云《い》ふも慵《ものう》し、
これもまた此《この》日の心。
我《わ》れは今ひともとの草、
つつましく濡《ぬ》れて項垂《うなだ》[#「項垂」は底本では「頂垂」]る。
悲しみを喜びにして
爽《さわや》かに大いなる秋。
今宵の心
何《なん》として青く、
青く沈み入《い》る今宵《こよひ》の心ぞ。
指に挟《はさ》む筆は鉄の重味、
書きさして見詰むる紙に
水の光流る。
我歌
求めたまふや、わが歌を。
かかる寂《さび》しきわが歌を。
それは昨日《きのふ》の一《ひと》しづく、
底に残りし薔薇《ばら》の水。
それは千《ち》とせの一《ひと》かけら、
砂に埋《うも》れし青き玉《たま》。
憎む
憎む、
どの玉葱《たまねぎ》も冷《ひやゝ》かに
我を見詰めて緑なり。
憎む、
その皿の余りに白し、
寒し、痛し。
憎む、
如何《いか》なれば二方《にはう》の壁よ、
云《い》ひ合せて耳を立つるぞ。
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