五歳《いつゝ》に満たぬアウギユスト、
みづから恃《たの》むその性《さが》を
母はよしやと笑《ゑ》みながら、
はた涙ぐむ、人知れず。
正月
紅梅《こうばい》と菜《な》の花を生《い》けた壺《つぼ》。
正月の卓《テエブル》に
格別かはつた飾りも無い。
せめて、こんな暇にと、
絵具箱を開《あ》けて、
わたしは下手《へた》な写生をする。
紅梅《こうばい》と菜《な》の花を生《い》けた壺《つぼ》。
唯一《ゆひいつ》の問《とひ》
唯《た》だ一つ、あなたに
お尋ねします。
あなたは、今、
民衆の中《なか》に在るのか、
民衆の外《そと》に在るのか、
そのお答《こたへ》次第で、
あなたと私とは
永劫《えいごふ》[#ルビの「えいごふ」は底本では「えいがふ」]、天と地とに
別れてしまひます。
秋の朝
白きレエスを透《とほ》す秋の光
木立《こだち》と芝生との反射、
外《そと》も内《うち》も
浅葱《あさぎ》の色に明るし。
立ちて窓を開けば
木犀《もくせい》の香《か》冷《ひや》やかに流れ入《い》る。
椅子《いす》の上に少しさし俯《うつ》向き、
己《おの》が手の静脈の
ほの
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