自分は此処《ここ》へ二度来る。
この前来た時は
いろんな車に轢《ひ》き殺され相《さう》で、
怖《こは》くて、
広場を横断する勇気が無かつた。
そして輻《ふく》になつた路《みち》を一つ一つ越えて、
モンソオ公園へ行《ゆ》く路《みち》の
アヴニウ・ウツスの入口《いりくち》を見附《みつ》ける為《た》めに、
広場の円の端を
長い間ぐるぐると歩《あ》るいてゐた。
どうした気持のせいでか、
アヴニウ・ウツスの入口《いりくち》を見附《みつ》け損《そこな》つたので、
凱旋門《がいせんもん》を中心に
二度も三度も広場の円の端を
馬鹿《ばか》らしく歩《あ》るき廻つてゐるのであつた。

けれど今日《けふ》は用意がある。
わたしは地図を研究して来てゐる。
今日《けふ》わたしの行《ゆ》くのは
バルザツク街《まち》の裁縫師《タイユウル》の家《いへ》だ。
バルザツク街《まち》へ出るには、
この広場を前へ
真直《まつすぐ》に横断すればいいのである。

わたしは斯《か》う思つたが、併《しか》し、
真直《まつすぐ》に広場を横断するには
縦横《じゆうわう》に絶間《たえま》無く馳《は》せちがふ
速度の速い、いろんな車が怖《こ
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