《かへで》、
かの男木《おとこぎ》も、その女木《めぎ》も
痩《や》せて骨だつ全身を
冬に晒《さら》してをののきぬ。
やがて小暗《をぐら》き夜《よる》は来《こ》ん、
しぐるる雲はここ過ぎて
白き涙を落すべし、
月はさびしく青ざめて
森の廃墟《はいきよ》を照《てら》さまし。
されど諸木《もろき》は死なじかし。
また若返る春のため
新しき芽と蕾《つぼみ》とを
老いざる枝に秘めながら、
されど諸木《もろき》は死なじかし。
落葉
ほろほろと……また、かさこそと……
おち葉《ば》……おち葉《ば》……夜《よ》もすがら……
庇《ひさし》をすべり……戸に縋《すが》り……
土に頽《くづ》るる音《おと》聞けば……
脆《もろ》き廃物……薄き滓《かす》……
錆《さ》びし鍋銭《なべせん》……焼けし金箔《はく》……
渋色《しぶいろ》の反古《ほご》……檀《だん》の灰……
さては女のさだ過ぎて
歎く雑歌《ざふか》の断章《フラグマン》……
うら悲《がな》しくも行毎《ぎやうごと》に
「死」の韻を押す断章《フラグマン》……
冬の朝
空は紫
その下《もと》に真黒《まくろ》なる
一列の冬の並木……
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