園中
蓼《たで》枯れて茎|猶《なほ》紅《あか》し、
竹さへも秋に黄ばみぬ。
園《その》の路《みち》草に隠れて、
草の露昼も乾かず。
咲き残るダリアの花の
泣く如《ごと》く花粉をこぼす。
童部《わらはべ》よ、追ふことなかれ、
向日葵《ひまはり》の実を食《は》む小鳥。
人知らず
翅《つばさ》無き身の悲しきかな、
常にありぬ、猶《なほ》ありぬ、
大空高く飛ぶ心。
我《わ》れは痩馬《やせうま》、黙黙《もくもく》と
重き荷を負ふ。人知らず、
人知らず、人知らず。
飛行船
外《よそ》の国より胆太《きもぶと》に
そつと降りたる飛行船、
夜《よ》の間《ま》に去れば跡も無し。
我はおろかな飛行船、
君が心を覗《のぞ》くとて、
見あらはされた飛行船。
柳
六《む》もと七《なゝ》もと立つ柳、
冬は見えしか、一列の
廃墟《はいきよ》に遺《のこ》る柱廊《ちゆうらう》[#ルビの「ちゆうらう」は底本では「ちうらう」]と。
春の光に立つ柳、
今日《けふ》こそ見ゆれ、美《うつ》くしく、
これは翡翠《ひすゐ》の殿《との》づくり。
易者に
ものを知らざ
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