き。
牡丹《ぼたん》よ、
葉は地中海の桔梗色《ききやういろ》と群青《ぐんじやう》とを盛り重ね、
花は印度《いんど》の太陽の赤光《しやくくわう》を懸けたり。
たとひ色相《しきさう》はすべて空《むな》しとも、
何《なに》か傷《いた》まん、
牡丹《ぼたん》を見つつある間《あひだ》は
豊麗|炎※[#「執/れっか」、11−上−10]《えんねつ》の夢に我の浸《ひた》れば。
弓
佳《よ》きかな、美《うつ》くしきかな、
矢を番《つが》へて、臂《ひぢ》張り、
引き絞りたる弓の形《かたち》。
射よ、射よ、子等《こら》よ、
鳥ならずして、射よ、
唯《た》だ彼《か》の空を。
的《まと》を思ふことなかれ、
子等《こら》と弓との共に作る
その形《かたち》こそいみじけれ、
唯《た》だ射よ、彼《か》の空を。
秋思
わが思ひ、この朝ぞ
秋に澄み、一つに集まる。
愛と、死と、芸術と、
玲瓏《れいろう》として涼し。
目を上げて見れば
かの青空《あをそら》も我《わ》れなり、
その木立《こだち》も我《わ》れなり、
前なる狗子草《ゑのころぐさ》も
涙しとどに溜《た》めて
やがて泣ける我《わ》れなり。
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