わん》に流れるのを感じる。
なんと云《い》ふ神神《かうがう》しい感興、
おお、※[#「執/れっか」、197−下−2]《ねつ》した砂を踏んで行《ゆ》かう。


    夏の力

わたしは生きる、力一《ちからいつ》ぱい、
汗を拭《ふ》き拭《ふ》き、ペンを手にして。
今、宇宙の生気《せいき》が
わたしに十分感電してゐる。
わたしは法悦に有頂天にならうとする。
雲が一片《いつぺん》あの空から覗《のぞ》いてゐる。
雲よ、おまへも放たれてゐる仲間か。
よい夏だ、
夏がわたしと一所《いつしよ》に燃え上がる。


    大荒磯崎にて

海が急に膨《ふく》れ上がり、
起《た》ち上がり、
前脚《まへあし》を上げた
千匹《せんびき》の大馬《おほうま》になつて
まつしぐらに押寄《おしよ》せる。

一刹那《いつせつな》、背を乾《ほ》してゐた
岩と云《い》ふ岩が
身構へをする隙《すき》も無く、
だ、だ、だ、だ、ど、どおん、
海は岩の上に倒れかかる。

磯《いそ》は忽《たちま》ち一面、
銀の溶液で掩《おほ》はれる。
やがて其《そ》れが滑《すべ》り落ちる時、
真珠を飾つた雪白《せつぱく》の絹で
さつと撫《な》でられ
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