斬《き》られて血を浴びる。
虞美人草《ぐびじんさう》の散るままに、
畑《はた》は火焔の渠《ほり》となり、
入日《いりひ》の海へ流れゆく。
虞美人草《ぐびじんさう》も、わが恋も、
ああ、散るままに散るままに、
散るままにこそまばゆけれ。
罌粟の花
この草原《くさはら》に、誰《だれ》であろ、
波斯《ペルシヤ》の布の花模様、
真赤《まつか》な刺繍《ぬひ》を置いたのは。
いえ、いえ、これは太陽が
土を浄《きよ》めて世に降らす
点、点、点、点、不思議の火。
いえ、いえ、これは「水無月《みなづき》」が
真夏の愛を地に送る
※[#「執/れっか」、188−下−11]《あつ》いくちづけ、燃ゆる星眸《まみ》。
いえ、いえ、これは人同志
恋に焦《こが》れた心臓の
象形《うらかた》に咲く罌粟《けし》の花。
おお、罌粟《けし》の花、罌粟《けし》の花、
わたしのやうに一心《いつしん》に
思ひつめたる罌粟《けし》の花。
散歩
河からさつと風が吹く。
風に吹かれて、さわさわと
大きく靡《なび》く原の蘆《あし》。
蘆《あし》の間《あひだ》を縫ふ路《みち》の
何処《どこ》かで人の
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