《しゆす》の喪《も》の掛布《かけふ》。
空は空とて悲しきか、
かなしみ多き我胸《わがむね》も
墨と銀との泣き交《かは》す
ゆふべの色に変る頃。
夏草
庭に繁《しげ》れる雑草も
見る人によりあはれなり、
心に上《のぼ》る雑念《ざふねん》も
一一《いち/\》見れば捨てがたし。
あはれなり、捨てがたし、
捨てがたし、あはれなり。
たんぽぽの穂
うすずみ色の梅雨空《つゆぞら》に、
屋根の上から、ふわふわと
たんぽぽの穂が[#「穂が」は底本では「穂か」]白く散る。
※[#「執/れっか」、184−下−2]《ねつ》と笑ひを失つた
老いた世界の肌皮《はだかは》が
枯れて剥《は》がれて落ちるのか。
たんぽぽの穂の散るままに、
ちらと滑稽《おど》けた骸骨《がいこつ》が
前に踊つて消えて行《い》く。
何《なに》か心の無かるべき。
ほつと気息《いき》をばつきながら
思ひあまりて散るならん、
梅雨《つゆ》[#ルビの「つゆ」は底本では「づゆ」]の晴間《はれま》の屋根の草。
屋根の草
一《ひと》むら立てる屋根の草、
何《な》んの草とも知らざりき。
梅雨《つゆ》の晴間
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