の秘経《ひきやう》の奥に
愛と栄華を保証する
運命の黄金《きん》の大印《たいいん》、牡丹《ぼたん》。
おお、そなたは、また、
新しき思想が我に差出す
甘き接吻《ベエゼ》の唇、牡丹《ぼたん》。
我は狂ほしき眩暈《めまひ》の中に
そを受けぬ、そを吸ひぬ、
※[#「執/れっか」、177−上−1]《あつ》き、※[#「執/れっか」、177−上−1]《あつ》きヒユウマニズムの唇、牡丹《ぼたん》。
おお、今こそ目を閉ぢて見る我が奥に、
そなたは我が愛、我が心臓、
我が真赤《まつか》なる心の花、牡丹《ぼたん》。
初夏《はつなつ》
初夏《はつなつ》が来た、初夏《はつなつ》は
髪をきれいに梳《す》き分けた
十六七の美少年。
さくら色した肉附《にくづき》に、
ようも似合うた詰襟《つめえり》の
みどりの上衣《うはぎ》、しろづぼん。
初夏《はつなつ》が来た、初夏《はつなつ》は
青い焔《ほのほ》を沸《わ》き立たす
南の海の精であろ。
きやしやな前歯に麦の茎
ちよいと噛《か》み切り吹く笛も
つつみ難《がた》ない火の調子。
初夏《はつなつ》が来た、初夏《はつなつ》は
ほそいづぼんに、赤い靴、
杖《
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