詩人の唇、
皆、微笑《ほゝゑ》める唇なり、
皆、歌へる唇なり。
    ×
あはれ、何《なん》たる、
若やかに、
好色好色《すきずき》しき
微風《そよかぜ》ならん。
青磁の瓶《かめ》の蔭《かげ》に
宵より忍び居て、
この暁《あかつき》、
大輪《たいりん》の薔薇《ばら》の
仄《ほの》かに落ちし
真赤《まつか》なる
一片《ひとひら》の下《もと》に、
あへなくも圧《お》されて、
息を香《か》に代へぬ。
    ×
瓶毎《かめごと》に
わが侍《かしづ》き護《まも》る
宝玉《はうぎよく》の如《ごと》き
めでたき薔薇《ばら》、
天《あま》つ日の如《ごと》き
盛りの薔薇《ばら》、
恋知らぬ天童《てんどう》の如《ごと》き
清らなる薔薇《ばら》、
これらの花よ、
人間の身の
われ知りぬ、
及び難《がた》しと。

此処《ここ》に
われに親しきは、
肉身の深き底より
已《や》むに已《や》まれず
燃えあがる※[#「執/れっか」、174−上−12]情《ねつじやう》の
其《そ》れにひとしき紅《あか》き薔薇《ばら》、
はた、逸早《いちはや》く
愁《うれひ》を知るや、
青ざめて、
月の光に似たる薔薇《ばら》、
深き疑
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