今日《けふ》、わが家《いへ》には
どの室《しつ》にも薔薇《ばら》あり。
我等は生きぬ、
香味《かうみ》と、色と、
春と、愛と、
光との中に。
なつかしき博士《はかせ》夫人、
その花園《はなぞの》の薔薇《ばら》を、
朝露《あさつゆ》の中に摘みて、
かくこそ豊かに
贈りたまひつれ。
どの室《しつ》にも薔薇《ばら》あり。
同じ都に住みつつ、
我は未《いま》だその君を
まのあたり見ざれど、
匂《にほ》はしき御心《みこころ》の程は知りぬ、
何時《いつ》も、何時《いつ》も、
花を摘みて賜《たま》へば。
×
われは宵より
暁《あかつき》がたまで
書斎にありき。
物書くに筆躍りて
狂ほしくはずむ心は
※[#「執/れっか」、172−下−7]病《ねつびやう》の人に似たりき。
振返れば、
隅なる書架の上に、
博士《はかせ》夫人の賜《たま》へる
焔《ほのほ》の色の薔薇《ばら》ありき。
思はずも、我は
手を伸べて叫びぬ、
「おお、我が待ちし
七つの太陽は其処《そこ》に」と。
×
今朝《けさ》、わが家《いへ》の
どの室《しつ》の薔薇《ばら》も、
皆、唇なり。
春の唇、
本能の唇、
恋人の唇、
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