賓客《まらうど》よ、
君が掌《てのひら》に置かん。
花に足る喜びは、
美《うつ》くしきアントニオを載せて
羅馬《ロオマ》を船出《ふなで》せし
クレオパトラも知らじ。
まして、風流《ふうりう》の大守《たいしゆ》、
十二の金印《きんいん》を佩《お》びて、
楊州《やうしう》に下《くだ》る楽《たのし》みは
言ふべくも無し。
いざ入《い》りたまへ、
今日《けふ》こそ我が仮の家《いへ》も、
賓客《まらうど》よ、君を迎へて、
飽かず飽かず語らまほしけれ。
×
一つの薔薇《ばら》の瓶《かめ》は
梅原さんの
寝たる女の絵の前に置かん。
一つの薔薇《ばら》の瓶《かめ》は
ロダンの写真と
並べて置かん。
一つの薔薇《ばら》の瓶《かめ》は
君と我との
間《あひだ》の卓に置かん。
さてまた二つの薔薇《ばら》の瓶《かめ》は
子供達の
部屋部屋に分けて置かん。
あとの一つの瓶《かめ》は
何処《いづこ》にか置くべき。
化粧《けはひ》の間《ま》にか、
あの粗末なる鏡に
影映らば
花のためにいとほし。
若き藻風《さうふう》の君の
来たまはん時のために、
客間の卓の
葉巻の箱に添へて置かん。
×
前へ
次へ
全250ページ中132ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング