タンの屋根に濡《ぬ》れかかり、
煤《すゝ》と煙を溶《と》きながら、
石炭|殻《がら》に沁《し》んでゆく。
雨はいぢらし、思ひ出す、
こんな雨にも思ひ出す、
母がこと、また姉がこと、
そして門田《かどた》のれんげ草。
薔薇の歌(八章)
賓客《まらうど》[#ルビの「まらうど」は底本では「まろうど」]よ、
いざ入《い》りたまへ、
否《いな》、しばし待ちたまへ、
その入口《いりくち》の閾《しきゐ》に。
知りたまふや、賓客《まらうど》よ、
ここに我心《わがこゝろ》は
幸運の俄《には》かに来《きた》れる如《ごと》く、
いみじくも惑へるなり。
なつかしき人、
今、われに
これを得させたまへり、
一抱《ひとかゝ》へのかずかずの薔薇《ばら》。
如何《いか》にすべきぞ、
この堆《うづたか》き
めでたき薔薇《ばら》を、
両手《もろで》に余る薔薇《ばら》を。
この花束のままに[#「花束のままに」は底本では「花束のまにまに」]
太き壺《つぼ》にや活《い》けん、
とりどりに
小《ち》さき瓶《かめ》にや分《わか》たん。
先《ま》づ、何《なに》はあれ、
この薄黄《うすき》なる大輪《たいりん》を
前へ
次へ
全250ページ中131ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング