から御門《ごもん》までの
赤土の坂、並木道、
太陽と松の幹が太い縞《しま》を作つてゐる。
わたしはぱつと日傘を拡げて、
左の手に持ち直す、
頂いた紫陽花《あぢさゐ》の重たい花束。
どこかで蝉《せみ》が一つ鳴く。
拍子木
風ふく夜《よ》なかに
夜《よ》まはりの拍子木《ひやうしぎ》の音、
唯《た》だ二片《ふたひら》の木なれど、
樫《かし》の木の堅くして、
年《とし》経《へ》つつ、
手ずれ、膏《あぶら》じみ、
心《しん》から重たく、
二つ触れては澄み入《い》り、
嚠喨《りうりやう》たる拍子木《ひやうしぎ》の音、
如何《いか》に夜《よ》まはりの心も
みづから打ち
みづから聴きて楽しからん。
或夜《あるよ》
部屋ごとに点《つ》けよ、
百|燭《しよく》の光。
瓶《かめ》ごとに生《い》けよ、
ひなげしと薔薇《ばら》と。
慰むるためならず、
懲《こ》らしむるためなり。
ここに一人《ひとり》の女、
讃《ほ》むるを忘れ、
感謝を忘れ、
小《ちさ》き事一つに
つと泣かまほしくなりぬ。
堀口大學さんの詩
三十を越えて未《いま》だ娶《めと》らぬ
詩人|大學《だいがく》先
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