り》の水。
柳の蔭《かげ》のしつとりと
黒く濡《ぬ》れたる朝じめり。
垂れた柳とすれすれに
白い護謨輪《ごむわ》の馳《は》せ去れば、
あとに我児《わがこ》の靴のおと。
黄いろな電車を遣《や》りすごし、
見上げた高い神楽坂《かぐらざか》、
何《なに》やら軽《かろ》く、人ごみに
気おくれのする快さ。
我児《わがこ》の手からすと離れ、
風船|玉《だま》が飛んでゆく、
軒《のき》から軒《のき》へ揚《あが》りゆく。
市中沙塵
柳の青む頃《ころ》ながら、
二月の風は殺気《さつき》だち、
都の街の其処《そこ》ここに
砂の毒瓦斯《どくがす》、砂の灰、
砂の地雷を噴き上げる。
よろよろとして、濠端《ほりばた》に
山高帽を抑《おさ》へたる
洋服づれの逃げ足の
操人形《あやつり》に似る可笑《をか》しさを、
外目《よそめ》に笑ふひまも無く、
さと我顔《わがかほ》に吹きつくる
痛き飛礫《つぶて》に目ふさげば、
軽《かろ》き眩暈《めまひ》に身は傾《かし》ぎ、
思はずにじむ涙さへ
砂の音して、あぢきなし。
二月の風の憎きかな、
乱るる裾《すそ》は手に取れど、
髪も袂《たもと》も鍋鶴《なべづ
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