いて言葉すくなく、
わづかな帛片《きれ》と
糊《のり》と、鋏《はさみ》と、木の枝と、
青ざめた指とを用ひて、
手細工《てざいく》に造つた花と云《い》はうか。
いぢらしい花よ、
涙と人工との
羽二重の赤玉《あかだま》を綴《つゞ》つた花よ、
わたしは悲しい程そなたを好く。
なぜと云《い》ふなら、
そなたの中に私がある、
私の中にそなたがある。
そなたと私とは
厳寒《げんかん》と北風《きたかぜ》とに曝《さら》されて、
あの三月《さんぐわつ》に先だち、
怖《おそ》る怖《おそ》る笑つてゐる。
新柳
空は瑠璃《るり》いろ、雨のあと、
並木の柳、まんまろく
なびく新芽の浅みどり。
すこし離れて見るときは、
散歩の路《みち》の少女《をとめ》らが
深深《ふかぶか》とさす日傘《パラソル》か。
蔭《かげ》に立寄り見る時は、
絵のなかに舞ふ鳳凰《ほうわう》の
雲より垂れた錦尾《にしきを》か。
空は瑠璃《るり》いろ、雨のあと、
並木の柳、その枝を
引けば翡翠《ひすゐ》の露が散る。
牛込見附外
牛込見附《うしごめみつけ》の青い色、
わけて柳のさばき髪《がみ》、
それが映つた濠《ほ
前へ
次へ
全250ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング