春よ春、
そなたの肌のぬくもりを
微風《そよかぜ》として軒《のき》に置け。

その手には
屹度《きつと》、蜜《みつ》の香《か》、薔薇《ばら》の夢、
乳《ちゝ》のやうなる雨の糸。

想《おも》ふさへ
好《よ》しや、そなたの贈り物、
そして恋する赤い時。

春よ春、
おお、横顔をちらと見た。
緑の雪が散りかかる。


    我前に梅の花

わが前に梅の花、
淡《うす》き緑を注《さ》したる白、
ルイ十四世《じふしせ》の白、
上には瑠璃《るり》色の
支那絹《しなぎぬ》の空、
目も遥《はる》に。

わが前に梅の花、
心は今、
白金《はくきん》の巣に
香《か》に酔《ゑ》ふ小鳥、
ほれぼれと、一節《ひとふし》、
高音《たかね》に歌はまほし。

わが前に梅の花、
心は更に、
空想の中なる、
羅馬《ロオマ》を見下《みおろ》す丘の上の、
大理石の柱廊《ちゆうらう》[#ルビの「ちゆうらう」は底本では「ちうらう」]に
片手を掛けたり。


    紅梅

おお、ひと枝の
花屋の荷のうへの
紅梅の花、
薄暗《うすくら》い長屋の隅で
ポウブルな母と娘が
つぎ貼《は》りした障子の中の
冬の明《あか》りに、
うつむ
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