巨大なダンテの半面像《シルエツト》が、
巍然《ぎぜん》として、天の半《なかば》に。

それはバルジエロの壁に描《か》かれた
青い冠《かんむり》に赤い上衣《うはぎ》、
細面《ほそおもて》に
凛凛《りゝ》しい上目《うはめ》づかひの
若き日の詩人と同じ姿である。
あれ、あれ、「新生」のダンテが
その優《やさ》しく気高《けだか》い顔を
一《いつ》ぱいに紅《あか》くして微笑《ほゝゑ》む。

人人《ひとびと》よ、戦後の第一年に、
わたしと同じ不思議が見たくば、
いざ仰《あふ》げ、共に、
朱《しゆ》に染まる今朝《けさ》の富士を。


    伊豆の海岸にて

石垣の上に細路《ほそみち》、
そして、また、上に石垣、
磯《いそ》の潮で
千年の「時」が磨減《すりへ》らした
大きな円石《まろいし》を
層層《そうそう》と積み重ねた石垣。

どの石垣の間《あひだ》からも
椿《つばき》の木が生《は》えてゐる。
琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]《らうかん》のやうな白い幹、
青銅のやうに光る葉、
小柄な支那《しな》の貴女《きぢよ》が
笑つた口のやうな紅《あか》い花。

石垣の崩れた処《ところ》には

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