《かや》は更に青し。
すいつちよよ、なぜに声をば途切らすぞ、
初秋《はつあき》の夜《よ》の蚊帳《かや》は錫箔《すゞはく》の如《ごと》く冷たきを……
すいつちよよ、すいつちよよ。


    油蝉

あぶら蝉《ぜみ》の、じじ、じじと啼《な》くは
アルボオス石鹸《しやぼん》の泡なり、
慳貪《けんどん》なる商人《あきびと》の方形《はうけい》に開《ひら》く大口《おほぐち》なり、
手掴《てづか》みの二銭銅貨なり、
いつの世もざらにある芸術の批評なり。


    雨の夜

夏の夜《よ》のどしやぶりの雨……
わが家《いへ》は泥田《どろた》の底となるらん。
柱みな草の如《ごと》くに撓《たわ》み、
それを伝ふ雨漏りの水は蛇の如《ごと》し。
寝汗の香《か》……哀れなる弱き子の歯ぎしり……
青き蚊帳《かや》は蛙《かへる》の喉《のど》の如《ごと》くに膨《ふく》れ、
肩なる髪は眼子菜《ひるむしろ》のやうに戦《そよ》ぐ。
このなかに青白き我顔《わがかほ》こそ
芥《あくた》に流れて寄れる月見草《つきみさう》の蕊《しべ》なれ。


    間問題

相共《あひとも》にその自《みづか》らの力を試さぬ人と行《ゆ》かじ、
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