彼等の心には隙《すき》あり、油断あり。
よしもなき事ども――
善悪と云《い》ふ事どもを思へるよ。
現実
過去はたとひ青き、酸《す》き、充《み》たざる、
如何《いか》にありしとも、
今は甘きか、匂《にほ》はしきか、
今は舌を刺す力あるか、無きか、
君よ、今の役に立たぬ果実《このみ》を摘むなかれ。
饗宴
商人《あきびと》らの催せる饗宴《きやうえん》に、
我の一人《ひとり》まじれるは奇異ならん、
我の周囲は目にて満ちぬ。
商人《あきびと》らよ、晩餐《ばんさん》を振舞へるは君達なれど、
我の食らふは猶《なほ》我の舌の味《あぢは》ふなり。
さて、商人《あきびと》らよ、
おのおの、その最近の仕事に就《つ》いて誇りかに語れ、
我はさる事をも聴くを喜ぶ。
歯車
かの歯車は断間《たえま》なく動けり、
静かなるまでいと忙《せは》しく動けり、
彼《か》れに空《むな》しき言葉無し、
彼《か》れのなかに一切を刻むやらん。
異性
すべて異性の手より受取るは、
温かく、やさしく、匂《にほ》はしく、派手に、
胸の血の奇《あや》しくもときめくよ。
女のみありて、
前へ
次へ
全250ページ中115ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング