古い香りを立ててゐる。
初めて聞いた言葉にも
昨日《きのふ》の声がまじつてる。
真実心《しんじつしん》を見せたまへ。


    寂寥

ほんに寂《さび》しい時が来た、
驚くことが無くなつた。
薄くらがりに青ざめて、
しよんぼり独り手を重ね、
恋の歌にも身が入《い》らぬ。


    自省

あはれ、やうやく我心《わがこゝろ》、
怖《おそ》るることを知り初《そ》めぬ、
たそがれ時の近づくに。
否《いな》とは云《い》へど、我心《わがこゝろ》、
あはれ、やうやくうら寒し。


    山の動く日

山の動く日きたる、
かく云《い》へど、人これを信ぜじ。
山はしばらく眠りしのみ、
その昔、彼等みな火に燃えて動きしを。
されど、そは信ぜずともよし、
人よ、ああ、唯《た》だこれを信ぜよ、
すべて眠りし女、
今ぞ目覚《めざ》めて動くなる。


    一人称

一人称にてのみ物書かばや、
我は寂《さび》しき片隅の女ぞ。
一人称にてのみ物書かばや、
我は、我は。


    乱れ髪

額《ひたひ》にも、肩にも、
わが髪ぞほつるる。
しほたれて湯滝《ゆだき》に打たるる心もち……
ほつとつく溜息《ためい
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