勢の人間が坐《すわ》つてゐる。
みんな黙つて俯《うつ》向き、
一秒の間《ま》も休まず、
力いつぱい、せつせと、
大きな網を編んでゐる。
三十女の心
三十女《さんじふをんな》の心は
陰影《かげ》も、煙《けぶり》も、
音も無い火の塊《かたまり》、
夕焼《ゆふやけ》の空に
一輪|真赤《まつか》な太陽、
唯《た》だじつと徹《てつ》して燃えてゐる。
わが愛欲
わが愛欲は限り無し、
今日《けふ》のためより明日《あす》のため、
香油をぞ塗る、更に塗る。
知るや、知らずや、恋人よ、
この楽しさを告げんとて
わが唇を君に寄す。
今夜の空
今夜の空は血を流し、
そして俄《には》かに気の触れた
嵐《あらし》が長い笛を吹き、
海になびいた藻《も》のやうに
断《た》えずゆらめく木の上を、
海月《くらげ》のやうに青ざめた
月がよろよろ泳ぎゆく。
日中の夜
真昼のなかに夜《よる》が来た。
空を行《ゆ》く日は青ざめて
氷のやうに冷えてゐる。
わたしの心を通るのは
黒黒《くろぐろ》とした蝶《てふ》のむれ。
人に
新たに活《い》けた薔薇《ばら》ながら
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