かの青空と太陽とを
両手で支へようとするのか。

そしてまた、そなたは
どうやら、心の奥で、
常に悩み、
常にじつと忍んでゐる。
それがわたしに解《わか》る、
そなたの鬱蒼《うつさう》たる枝葉《えだは》が
休む間《ま》無しに汗を流し、
休む間《ま》無しに戦《わなゝ》くので。
さう思つてそなたを仰ぐと、
希臘《ギリシヤ》闘士の胴のやうな
そなたの逞《たくま》しい幹が
全世界の苦痛の重さを
唯《た》だひとりで背負つて、
永遠の中に立つてゐるやうに見える。

或《ある》時、風と戦つては
そなたの梢《こづゑ》は波のやうに逆立《さかだ》ち、
荒海《あらうみ》の響《ひゞき》を立てて
勝利の歌を揚げ、
また或《ある》時、積む雪に圧《お》されながらも
そなたの目は日光の前に赤く笑つてゐる。

千年の大樹《だいじゆ》よ、
蜉蝣《ふいう》の命を持つ人間のわたしが
どんなにそなたに由《よ》つて
元気づけられることぞ。
わたしはそなたの蔭《かげ》を踏んで思ひ、
そなたの幹を撫《な》でて歌つてゐる。

ああ、願はくは、死後にも、
わたしはそなたの根方《ねがた》に葬られて、
そなたの清らかな樹液《セエヴ》と

前へ 次へ
全250ページ中107ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 晶子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング