結婚数の減少は毫《ごう》も女子の罪ではなく、その責任は男子側にあって、これを婦人問題として議する前に宜しく男子問題として男子側の意気地《いくじ》なさを咎《とが》むべき事でしょう。女子に良人を養うだけの財産があるのでなく、男子ほどの報酬を得《う》る職業を授けられているのでなく、その上自由に配偶者を選択する事も許されていない今日、結婚数の減少は当然その理由を男子側の経済問題に帰せねばなりません。女子に教育を授けた結果だなどというのは甚だ方角ちがいの解釈です。
正当に求婚する男子がない以上、女子が子を産まないのは怪むべき事でありません。今の女子の多数は母としての職能を尽したくても尽す事が出来ない境遇にいるのです。それなら国民の生産数は非常に減じて行くかというに、かえって非常の倍加力を以て殖《ふ》えて行く。三十年を出《い》でずして日本人は現在の倍数にも達するでしょう。国民の繁殖力からいえば憂うべき事もないのですが、未婚男女間に行われる不倫な性交と私生児の増加とは、現在の生活を暗黒にし将来の日本人種を劣弱にする事ですから、その点について男子側の反省を促すと共に女子|自《みずか》らも反省しなく
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